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この話は、日本チェロ協会がまだ「チェロの日」を始める前の2006年に、その前身となる 「チェロの音楽会」を開催した際、「参加レポートを寄稿せよ」と依頼されて、会報第26号 (2007年1月31日)に掲載して頂いた文章を、そのまま転載したものです。

ご参考:「チェロの音楽会」 2006年11月4日(土)14時より サントリーホール小ホール

ちなみに、現在「ブルーローズ」の名前で親しまれる同ホールは、2007年の改修時に名称が変更されたため、「小ホール」と呼ばれていた最後の時期のイベントとなりました。

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「マ氏の飛び入りに興奮」 石島    栄一 (R-016)   
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 会員番号R-016の石島です。先日の「チェロの音楽会」に参加した感想を、というご指名を賜りましたので乱筆乱文ご容赦下さい。

 私はJCSの会員である堀内さんや谷口さんらと共に、無謀にもバッハのシャコンヌ(チェロ四重奏版)にチャレンジした結果、途中で乱れ狂ったリズムからの生還までのドキドキハラハラのドラマなどがあって
「これぞ音楽の醍醐味(?)」という体験をしましたが、
何とか曲の最後まで辿り着けたのでそれはよしとして、
当日は大ホールでバッハの無伴奏の演奏会があったヨーヨー・マさんが、ステージの合間に顔を出してくれましたので、私から見た「その時」を紹介したいと思います。

 我々は丁度後半の「みんなで弾こう」のコーナーに入り、40人ほどでビートルズのレディ・マドンナをさあ弾こうか、というところでした。
もしかしたら顔を出すかもしれないという噂は参加者に広まっていましたので、
うわっ、本当に来た、という異様なざわめきの中、笑顔で登場してきたヨーヨー・マさんは、
旧知の仲である堤剛さんとの再会を喜び、
「このように大勢が集まって一緒に演奏できるのは、他の楽器では難しい。チェロは素晴らしい」
というような挨拶をした後、参加者の楽器を借りて合奏に飛び入り参加してくれたのです。
おおっ、という声が広がる中、たまたまレディ・マドンナは、私がチェロ合奏用にアレンジした楽譜だったために、堤剛さんから「テンポがよくわからないので指揮を」という突然の指名が私に。
堤剛さん以外にも、堀了介さん、苅田雅治さん、中島顕さん、山崎伸子さん、倉田澄子さんという日本を代表するプロの方々がトップに座られている中で、私の指揮はあり得ないと思いつつも、誰かがやらねばと腹をくくった次第です。

 音を出すのは世界で初めての楽譜ですが、いざ始めてしまえば特にテンポが揺れるところもなく、錚錚たるトップの方々がアマチュアのメンバをリードして順調に曲は進み、指揮をしている私もホッと一息です。
ふと2番パートの一番後ろのプルトで弾いているヨーヨー・マさんを見てみると、なんと、楽しそうに曲を弾きながら、 笑顔で私を見ているではありませんか。目が合ってしまいましたよ。
いくら簡単なアレンジだといっても、初見の曲です。それを、弾きながら楽譜を見ないで指揮者を見ているとは、まさに世界の七不思議状態です。

 無伴奏を2ステージで全曲弾くその合間を縫っての息抜き(?)は、曲が3分間、登場から退場まで全て含めて10分もなかったと思います。
最後は「これからもチェロを楽しみましょう」と言って会場を後にされました。
短い時間でしたが、参加したアマチュアにすれば「ヨーヨー・マと同じステージで演奏した」という記念ですし、私にとっても忘れられない思い出となりました。
参加して頂いた評議委員の先生方にはもちろんですが、今回のイベントを支えて下さった事務局の方々に心から感謝したいと思います。
特に、今回をもって別の業務に移られる溝口さん、本当にありがとうございました。

Writing03

~ ヨーヨー・マを指揮した男の話 ~

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