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 ICC参加レポート 9/15

石島です。レポートその9。4日目のお昼です。

2005/5/19


<プロミシングチェリストコンサート>
この日はチョイ・ワンギュさん。曲はブラームスのソナタ1番(1楽章)、ポッパーの「森にて」他1曲。

1580年製(!)という小ぶりのチェロで、甘い音色を奏でていた。今回、自由席では私は最前列で聴くのが常であるが(イヤな聴衆だな)、このような音は広い会場では遠くまで通るのだろうか。

ちなみに今回のICCでは、ブラームスの1番はマスタークラスも含めると3回(3人)の演奏を聴けたが(全曲通したのは山崎伸子さんだけ)、ブラームスの2番は一度も演奏されずに残念。
多く演奏されたのはドビュッシーのソナタ(3回)、またバッハの6番も、プレリュードに限ってだがマスタークラスやクリニックを含めると3回であり、この3曲が演奏者側の「人気曲」であった。

<チェロアンサンブルコンサートI>
向山佳絵子さん&ダヴィッド・ゲリンガスさん、CELLO×2(←チェロチェロと読む)、ソウル・チェリステン、ミュンヘン・フィルハーモニック・クァルテットの4団体が演奏。
向山さんとゲリンガスさんはヤマハのサイレントチェロを使っての演奏。
それぞれとても楽しい演奏であった。

ちなみにゲリンガスさんのサイレントチェロは、彼のアコースティックのチェロと同じようなコンディションに調整(改造?)した特注品で、100万円を超える代物らしい。
私が学生のときに買ってまだ現在も使っている楽器よりも高いではないか! 金持ちの道楽だ! と言いたいところだが、まあ超人のゲリンガスさんであるからして、特別に許すことにする。

<マスタークラス>
この日は大きな会場で、シュタルケルさんによる指導。
一人目の受講生は日本の音大生(女性)でベートーヴェンの5番。

・アダージョでの歌い方は、ハミングではなく「歌う」ように。そのためには、右手の重さの掛け方をコントロールすることで実現する。

・アタックなしで弾き始めるには、脱力していなければ難しい。即ち、息を十分に吐きながら右手を動かし始めること。

次は(最後の受講生)韓国の女性。


曲はドボルザーク。
非常に上手くかつ安定しており、さらに「過剰とも言える位、とても表情豊か」な演奏。シュタルケルさんが、演奏中にあまり演奏者を見ずに、ほとんど違う方向を向いているのが気になる。

開口一番「音楽はどこの国でもPlay(遊ぶ?)に相当する言葉が当てはまり、決して楽器との戦いではない」「楽しいということを聴いている人に伝える必要がある」「何故そんな顔をして弾くのだ」「かわいい顔が台無しだ」「自分が演奏する姿をビデオに撮って自分で見たことがあるか」「私はそのような表情を見るのはイヤだ」など連発。

・音楽は顔で表現するものではない。
・私はこれまで何十年も、そうしないで "音で" 表現して伝えるためにずっと努力をしてきた。

言葉で書くと辛辣だが、決して非難しているのではなく、今のスタイルを変えることで、現在でも素晴らしいけれど更に大きな演奏家になれるよ、と伝えていることを感じた。

受講生はこれに応じて今度はニコヤカに「笑顔を作って」弾く。
何と愛嬌のある笑顔であることか。
それがすぐにできる応用力と余裕ある演奏技術。
この娘に限らず、韓国の学生の表現力は非常に豊かな人が多いと今回感じた。
それに比べると日本の学生は「ちゃんと弾くけど伝えたいものを感じさせない」演奏が比較的多いように思えた。
頑張れ日本!

演奏内容についても多くの指摘があり、ヒッチハイクビブラートなる奏法も紹介されたが、それが何であるかは書く時間がないので割愛。

最後に「マスタークラスはフラストレーションが溜まるタスクだ」と。
今回の曲に限らず、本当は長い時間を掛けて身に付けることが沢山ある曲なのに、限られた時間でそれができない、とのこと。

そして本当に最後に、その場にいる全員に向かって「どうかチェロを愛し続けて下さい」との言葉と共に退席。
私は人知れず客席で涙。

今回はここまで。4日目はまだ続く。

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